研修医
インタビュー

03

系統だった診断方法で
患者を紐解く

岩手医科大学附属病院 脳神経内科・老年科

佐藤 裕里子 Yuriko Satoh

Profile

岩手県出身
岩手医科大学医学部卒業
2019年4月
岩手県立中央病院 初期研修(〜2021年3月)
2021年4月
岩手医科大学大学院医学研究科
(神経内科学)入学
2021年4月
岩手医科大学 脳神経内科・老年科入局
岩手医科大学附属病院 内科学講座
脳神経内科・老年科勤務
学会活動
日本内科学会、日本神経学会、日本認知症学会他
主要研究領域
認知症

Course of events

脳神経という複雑な分野に対して、学生時代は苦手意識がありました。ところが5年生の臨床実習のとき、神経内科の先生方が患者さんに詳細に問診を行いながら疾患をどんどん絞り込んでいくプロセスに興味を持ち、その系統だった診断手法が自分にも合っていると感じ入局を決意しました。

脳神経内科の魅力

病名をどんどん絞り込んでいく診察が興味深い

脳神経内科・老年科では、まず診察をする前に患者さんの症状について詳細に病歴を聞き出します。家族歴、既往歴、生活歴などもしっかり伺います。そして一般診察、神経診察を重ねるなかで病名を絞り込んだ後に、最終的に血液検査、生理検査、画像検査などを行います。他科の疾患はそのような検査を始めから手がかりとし病名が明らかになることも多いですが、脳神経内科・老年科では病歴と診察の比重が大きく、検査自体はそれらを確かめるための補助診断として使用する場合も多く見られます。少し大げさかもしれませんが、自分の体と頭を使ってある程度診断を絞り込むというところに神経内科の面白さを感じました。
扱う疾患は脳梗塞、認知症、パーキンソン症候群、多発性硬化症などさまざまです。一口にパーキンソン症候群や認知症と言っても経過や治療の有効性についても様々特徴があるため本当に奥が深いと思います。その一方で脳梗塞のように迅速な対応が求められる疾患も扱っているため、こうしたバリエーションの豊富さも私にとって大きな魅力です。

内科専門医研修プログラムで
学んだこと

最新の知見を深く理解するため、大学院入学を決意

大学病院では教科書には記載されていない稀な疾患にも遭遇し、最新の研究などについて論文で調べることも少なくありません。その際、なぜ研究が行われたのか、解釈はどのようにされたのか、今後の課題は何か、より詳しく知りたいと感じるようになりました。自分自身も研究に携われば、もっと理解がより深まるのではないかと考え、大学院に進みました。認知症分野を選択したのは、高次脳機能に興味があったからです。1〜2週間に一度の抄読会で最新の知見に触れ、英語を読解する機会にもなるので研究班の勉強会はとても良い経験になっています。

医局について

「人の役に立ちたい」という熱意から、根気強く、妥協せず、考え抜く

自分ではまだ及んでいないことも多いですが、神経内科の先生方は本当に分かるまで徹底的に調べ上げる方が多いです。これは確定診断に至らない疾患も多い脳神経内科の特徴なのかもしれませんが、可能性が少しでもあれば、どうしてそれが違うと言えるのか根拠をもって言い切れるまで調べ尽くします。根気強く、妥協せず、とことん考え抜く姿勢はこれからも見習っていきたいと思いますし、こうした根底にあるのは「人の役に立ちたい」「人を救いたい」という先生方の熱意だと思います。実際、一緒に働いていても思いやりのある先生が多く、私自身もいつも助けていただいてばかりです。
また脳神経内科では、地域在住高齢者の方を対象としたコホート試験を実施しています。私はこのデータを用いて、以前から興味のあった「認知症と睡眠薬」をテーマに研究を進めています。認知症と睡眠薬の関係性はさまざまな説があるものの、確立したエビデンスがなく、これらを明らかにすることで介護の負担を減らすきっかけになればと思っております。

目指す医師像

患者さんに寄り添う医療を提供できる医師になりたい

自分は将来、高次脳機能について学び、認知症の専門外来などをお手伝い出来たらいいなと思っております。認知症にはさまざまな種類がありますが、全ての患者さんに認知症の心理検査や脳血流SPECTなどの核医学検査などを行うことは現実的に難しいです。そのため精査が必要そうな患者を外来の短時間でスクリーニングするスキルが求められます。指導医の先生はそのスキルに非常に長けているので、先生方を見習って、日々精進していきたいと思います。そして、患者さんの社会背景も含め、寄り添う医療を提供できる医師になりたいと思います。

Message

全身のことを理解していないと鑑別疾患の選択肢が狭まったり、紹介のタイミングを誤ったりする可能性があります。私は研修医時代や総合診療科のローテートで、さまざまな患者を経験させていただくことができたのでとても勉強になりました。いろんな疾患に触れ合えるよう、自分から積極的に行動することも重要と思います。そういった意味でも内科研修プログラムはとても魅力的なシステムです!

日本は超高齢化社会となり、認知症や脳卒中やパーキンソン病などの脳神経疾患の患者が増えており、私たち脳神経内科医を必要としています。佐藤先生が惹かれたように、私たちは綿密な病歴と緻密な診察により障害の性質や部位を明らかにして、様々な検査で裏を取って論理的に鑑別診断を行います。かつては治らない疾患を診る科の代表とされた脳神経内科は、脳神経科学の進歩により次々と治療が開発され、今や治すことができる科に大きく変貌を遂げました。当科は老年科も標榜していますが、もちろん若年者に好発する疾患も非常に多く、認知機能や情動、運動、感覚、自律神経機能も含めてヒトの全ての活動を対象とし全人的な医療を実践しています。明るく活発な医局ですので、是非、見学に来てください。

脳神経内科・老年科 教授 前田 哲也